自然科学、標本学の聖地「DEYROLLE」

博物標本店の聖地とでもいうような有名店DEYROLLEはフランス・パリにある自然科学と教育学のためのパリのメゾンで剥製や標本、自然史に関連する多くの専門的な書籍も販売している1831年創業の老舗専門店。非常に貴重な動物個体の標本が数多く陳列されていたが不幸にも2008年に電気系統からの出火で全焼してしまったらしい。多くの人に大きな衝撃とショックを与えたという。

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篤志家の寄附もあり20xx年に新しい地に復活することになった。

そんなDEYROLLE。壁はライムグリーンの部屋に様々な動物標本が置かれている。陳列というと違うかもしれない。サイズの揃った標本が一列に並んでいるのではない。大小様々なものが並んでいて動きがあり、こんなところにこんな標本があるのかと見つける楽しさもある。標本も直立不動ではなく寛いでいたり、振り向いていたりと自然なポージングしており、眼に正気が宿っているかのような標本の質の高さもあって陳腐な表現だが「まるで生きているかのような」標本ばかりだ。

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虎の眼には気高さと無邪気さが混ざった虎そのものの存在感を感じる。

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もしかしたら古い標本は焼失してしまって、ここに並ぶのは最新の剥製技術、標本技術が用いられたものばかりだからなのかもしれない。

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希少種だけを珍重しているわけではなくヒヨコやアヒル、イノシシの幼獣など珍しくも無い個体種が驚くほど魅力的で生き生きとした標本となって飾られている。自然の造形に対する敬意を感じる。

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昆虫の陳列棚も素晴らしくこちらは系統毎に整然と美しく並べられている。フランスは旧植民地をアフリカやポリネシアなどに多く持っていることもあってか様々な品種が並ぶ。

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単に仕入れて販売しているだけの小売店ではない。展足して整えて標本を制作販売しているだけでなく数々の専門書を出版している。高円寺の「むし社」を範囲規模ともに拡大した感じだろうか。

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アート界との繋がりも深くサルバドール・ダリやウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・ナボコフなどが熱心な顧客だったそうで近年の火災焼失時には現代美術家のアンセルム・キーファー、ミゲル・バルセロ、ホアン・ヨン・ピンや写真家のナン・ゴールディン、ソフィー・コールなど大勢がお見舞いに来たという。

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最高な技術でもってその生物種の美しさを最大限に引き出すことへの執念のようものを感じる。

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