パリでの友人との食事の備忘

パリ出張時にこれまで3,4回会っている大学時代からの友人と夕食を共にした。

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もうかれこれ20年もパリでドレスデザイナーとして組織にも属さずやってきたことで昨年政府から表彰を受けたという。COVID前にアトリエをお邪魔した際に会った奇天烈な日本語Tシャツを着ていたトランスジェンダーのアシスタントはGivencyのパタンナーをしているという。歴代のアシスタントは皆、ファッション業界でステップアップしており彼女もそう後押ししているそうだ。年齢に従い給与も上げていかないといけないので経営を考えると育ったら送り出し、給料の安い若い才能のある人を採用し育てていく方針らしい。

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フランス人の夫は貴族で祖父は歴史の教科書にも載っており無くなった際には国葬された方で家族は全般的にマナーにはとても厳しいのだという。例えば"bon appetit"は美味しくもない粗末な食事を”Bon appetit=良い消化を”と促すような表現で品がない、上流階級では使わないフレーズなのだそうだ。"bonne degustation=どうぞ召し上がり下さい”を使うように注意を受けたとか。

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以前、私もご自宅に招かれて夕食を共にしたこともある夫は弁護士で着々と実績を積んでおり、去年はなんと新たに発見されたレオナルドダヴィンチのスケッチ画の真贋を鑑定する案件に携わり、絵の筆跡や鏡文字の署名なども含め本物であることが証明されて1700万€で売却されたそうな。30億円とは豪儀な話だ。弁護士の成功報酬はいくらだったのだろう。

 

夫がフランス貴族の出でとても忙しい弁護士らしいが彼女もデザイナーとして名を馳せとても忙しくしているのでそれで均衡がとれてうまく言っているのだという。私達夫婦は対等で相手の家系が貴族だろうと引け目は感じないと言っていた。田舎に豪華な別荘を買った夫の友人の奥様にいろいろ誘われるがパーティーばかりで辟易するという。奥様はパティシエを始めたそうだが、前受け金をきちんととらなかったり大口注文でも契約も交わしていなかったりあちこちが杜撰で結局大赤字を出して辞めたという。結局は暇な奥様が友人に自慢したり雑誌に載って見栄や名誉を得るための趣味事で仕事のクオリティーではなかったとなかなか辛辣だった。私はそんなくだらないパーティーよりも注文のドレスづくりに忙しいのだと。私も半端な陶芸作家なので耳が痛い。

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ちなみに在仏中国人や台湾人は政治の話は避ける人が多いらしいのだが、政治も含めて全てのことに不平不満を言ってこそフランスに溶け込むことだと言っていたのは笑えた。最近では台湾大使館で通訳の仕事もしており、フランスでの仕事も生活も中国政府に監視されていると思っているそうだ。今後の懸念は中国と台湾との間の有事。フランスを含めイギリス以外の欧州列国は欧州隣国のウクライナすら見捨てているのだから台湾なんて支援はしてくれないと思うべきだと在仏台湾人の楽観を嘆いていた。

 

予約してくれたレストランは想定していたよりもフォーマルで私の服装は場違いだった。お勘定は3万円していたがご馳走になってしまった。

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彼女のご指名で「ひろしの純米大吟醸」というクレヨンしんちゃんのひろしがラベルに描かれた日本酒と長野善光寺門前の1598年創業の酒蔵の「西之門」純米大吟醸、柿の種、抹茶ルマンドギンビスアスパラガスなどを土産に持ってきた。後でどれが美味しかったか感想を聞きたい。

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次回パリに来るのは何年後かわからないがその時には私も何か面白いステップアップができていたら良い。