
以前お買い上げいただいて鉢を落として破損してしまわれた方から修復依頼をいただきました。ここまでなってしても修理したいと思ってくださるのは大変嬉しいことです。
生と死、蟲と植、土と陶、腐敗と涵養、それら要素の移ろいと混ざり合いの表現を「陶蟲夏草」のコンセプトにしているからには崩壊と修復はむしろ取り込んで昇華させるべき要素ではないかとすら思っています。元通りにはなりませんが新漆と金継ぎで「変化」させてお届けしたいと思います。

そんなわけで破片が欠損している箇所をパテで埋める。呼び継ぎというらしい。
さらに改変に当たる部分だが菌子実体も加飾。
とりあえず形状としては繋ぎ合わされた状態。
痛々しい継ぎ目。
ここから新漆に洋金粉を混ぜたものを盛り付けて塗っていく。
ヘビヌカホコリのような粘菌が這っているようにしたいので敢えてこんもりと盛り付けた。マットで均一な金属光沢にすべく、金粉を蒔く。

乾燥させて余分な金粉を洗い流す。
金継ぎで繋ぎ合わせた開き直った主張に粘菌をうまく重ねられているだろうか。
何分、ここまでの修復は初めてのことなのでまだまだおぼつかないが今できる限りのことはした。