中国の大学では1年生から毎年、国内現代史の授業が義務付けられているという。その内容はと言えば共産党の歴史が全てで、共産党の成り立ちから文化大革命などの一部軌道修正を必要とした試み、改革開放政策の成功などいかに共産党が素晴らしく、共産党が無くなれば如何に中国が混乱しうるかといった内容だという。
彼女曰く、
教授側はそんなものを毛頭信じていないことを自覚している
生徒側も教授が信じていないことを知っている
さらに教授も信じていないことを生徒に見透かされていることを知っている。
それにも関らず生徒は単位と成績が欲しいから神妙真剣な顔をして授業を聞き、教授側も教鞭を取り続ける為の必要義務として授業を行う。
彼女は仲の良い学生とは、誰も共産党の言うことなど信じてないよね、とお互いに開けっ広げに話すという。但し、それを文面にするような馬鹿な真似はしない。いつそれが自分を陥れる材料に使われるかわからないから。
共産主義という話をする時、彼女はそれは世間一般的な共産主義の話で中国共産主義は別だと指摘してくることが度々ある。一般的にはどのような要件を満たしているから共産主義である、あるいはどのような理想世界を志向しているから共産主義であると考えがちだが、中国の場合にそれらを考えている人は殆どいないのではないかと言う。一部の人にとってより多くの富を獲得するのに都合がよいかどうかというだけで、平等だの格差の是正だの労働者を如何に社会の主役にするかなどそんな議論を市井で聞くことは皆無だという。授業内で決められたメッセージを壊れたスピーカーのように繰り返し再生するだけで、それに取り組む議論など無い。友人は個人を尊敬し形骸的な組織闘争を否定し平等を願う自分の方がよっぽど共産主義的だが、この国では体制から遠い扱いを受けると笑っていた。
共産主義は壮大な都市人民を挙げてのヤラセだという印象。中国人は共産主義なんかではなくて中華主義だという友人の言葉が頭に残っている。