コロナ巣篭もり生活のお供 日本酒あれこれ感想

コロナ外出自粛生活3か月目。最近、酒量が増えている。 

 

コロナ禍における飲食店の営業停止や大量閉店で業務用の日本酒消費が大打撃を受けているそうな。酒蔵によっては飲食店向けの一升瓶を個人消費向けの四合瓶に詰め替えなおして出荷しているところもあるらしい。一般に知れ渡っていないが日本国内の日本酒製造免許の新規発行は永らく認められていない。ようやく政府も海外での日本酒需要の増加を受けて輸出を専業とする限りにおいて新規製造免許の発行を行うらしい。つまり、国内向けに廃業しても開業はできない。

国内市場は依然として減少傾向。酒蔵は零細の家族経営も多い。体力もなく、一旦廃業したらもう二度とその味は戻らない恐れもある。そして私の好きな日本酒は神戸に多い「〇鶴」などのような紙パック酒まで大量生産しているような蔵元ではなく、山廃仕込みなど手間暇をかけた伝統技法を用いて比較的小規模なタンクで製造している蔵の酒が多い。平成9年から27年までの18年間で700社、全体の1/3近い醸造所が廃業した。コロナ禍でも加速する恐れが強い。蟻の一噛みのような効果かもしれないが、好きな酒蔵のお酒を少しでも飲み続けたい次第。

 

飲んだ感想を備忘録がてら、それぞれ⭐︎をつけてはみた。あくまでも善し悪しではなくたまたま食べた食事との飲み合わせの私の「好み」に過ぎない。同じ銘柄でも温度や合わせる食事次第でそのお酒の真価は引き出せるし、私は引き出す工夫をせず漫然と飲んだ上での好みと感想に過ぎないことは予め断っておきたい。

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まずは山梨の「青煌」で知られる武の井酒造のお酒。この酒蔵は日本全国平均の製造石数が380石に対して80石(一升瓶8000本)と最小規模クラスの酒蔵。つるばら酵母八ヶ岳山麓の伏流水を使って仕込んだ美味しいお酒。消費者、酒販店、蔵元の割り勘で一本当たり100円が医療従事者に寄付される企画商品を作って出している。私はてっきり蔵元支援のために100円が上乗せされた商品かと思ったがそうではなかった。なんたる心意気。それでもってお酒自体も食中酒に最適な純米美酒。あっという間に売り切れていた。こういうお酒の企画品をもっと出せ。むしろ、100円を消費者が負担し、医療従事者と酒蔵あるいは米農家に寄付するというのでも良いと思うのだが。大変な状況下にあろう小さな酒蔵が医療従事者を支援しているのに、酒飲みが酒蔵を支援しなくてどうする。

 

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☆☆☆庭の鶯の春限定どぶろく

甘味のある酸味で目から鱗の美味しさだった。1升瓶で買ってしまえばよかった。無濾過生原酒よりも発酵が進んでおらずアルコール度数は7度。ビールのようにゴクゴクと飲めてしまう。昼間からのんびりと肴もなしに飲むのも良い。

 

☆☆上喜元「仕込第五三号」

佐藤正一杜氏「渾身」。ハズレのない食中酒。

 

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☆☆☆山形県鶴岡の「吾有事」特別純米

食中酒として私の好みど真中の酸味と旨味が感じられ、吟醸香が立ちすぎずに料理の邪魔をしない一品。お腹が満たされた後で酒だけを杯を重ねる段階になっても改めて美味しいと思える食中から食後まで楽しめるお酒。しかも720mlの四合瓶で1300円という手頃さ。こんなにコスパの良い銘柄は少ない。常備したい。

 

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☆☆☆神奈川の「残草蓬莱」特別純米槽場直詰生原酒

神奈川にこんな美味しいお酒があったとは灯台下暗し。白麹で仕込んだお酒なのだそうだ。

搾ったお酒を直詰めしており、爽やかなガス感と果実のような甘酸っぱさ。洋食に合うのだそうだ。確かにイタリアンのつまみ盛り合わせと飲んだら最高に美味しかった。翌日、餃子とともに飲んだ際に昨日ほどの美味さを感じなかったのはガスが抜けたからなのかと思ったが、おそらくはマリアージュの問題。

万能なお酒ではないのかもしれないけれども、上手く合わせられるととても幸せな気分になれる日本酒。

 

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⭐︎⭐︎⭐︎東京の「屋守」純米中取り直汲み生。

阿佐ヶ谷の柳瀬屋の大将が東京で一番美味しいと太鼓判を押すだけのことはある。微発泡の甘酸っぱい旨い酒。絞り始めと絞り終わりの部分を混ぜずに真ん中部分の澄んだ酒だけを取り、直瓶詰した贅沢品。それでも720mlで1700円の買い求めやすさ。志村けんさんの地元の蔵で愛飲した銘柄だとか。東京にもこんなに美味しい日本酒があるとは、日本酒界は奥が深く広い。 店に並んでいるのを見かけたら即買いの一銘柄。

 

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☆☆篠峯純米吟醸

 阿佐ヶ谷の柳瀬屋の大将が好きだそうで店頭に造りの異なる篠峯が6銘柄も並んでいる奈良のお酒。開栓するとシャンパンのようにポンと音がするほど発酵時の天然の炭酸が残っている。しっかり酸味が効いており美味しい。同時に買った屋守が好みすぎたので評価に差をつけてみたがこれはこれでとても美味しいし食べ合わせが違えばさらに美味しく飲めた予感。

「本酒をより楽しんで頂く為には、料理とのマリアージュや適温での燗、生酒も含めた熟成など、魅力的なソフトが大事だと考えています。 変化する事の良さを日本酒で感じて頂きたいと思っています。変化する日本酒は難しい、だからこそ日本酒は楽しいのです。
これからの日本酒は酒蔵を出てからの変化をどのように飲み手の方に伝えていくかが問われてくると考えています。四季を通じて表情を変える生酒は勿論の事、生モトに代表されるような熟成によって美味しくなるお酒や燗をする事によって真価を発揮するお酒、料理との相性で一層花開くお酒など、酒蔵だけでは完結しない日本酒の魅力を伝えたいとの思いから、限定流通商品の「篠峯」を1999年から立ち上げて販売しています。」蔵元千代酒造のWEBより引用。

 

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☆☆秋田の人気酒蔵「新政」の令和一年醸造

生酛純米造り、六号酵母使用の木桶発酵。2019年収穫の「改良信交」という秋田県産米を使っているのだそうだ。

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ああ、新政だと思わせる、甘味のある味。こういう味のお酒を飲みたいときは新政が浮かぶほどEquityが確立した印象。私の好みとしてはもう少し酸味があってもいいな、と思う。

 

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梵 純米大吟醸「艶」

ラベルに艶がある。大吟醸酒としては香りは抑え目かもしれない。オンライン飲み会でアテをつつきながら、芳醇な香りを楽しめた。アボカドと明太子のペーストだとか、脂っこいものと良く合った。

 

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☆「真澄」すずみさけ

昨年、諏訪の蔵元を訪ねてさらに愛着が湧いた真澄。さらさら、するすると飲んでしまう夏酒。

 

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☆「横山五十」山田錦純米大吟醸

長崎のお酒。田中六五という福岡のお酒もある。そういえば将棋の加藤一二三名人も福岡生まれなので「苗字」+「数字」は九州に多い名前のパターンなのだろうか。しかし山本五十六は新潟生まれか。よくわからん。

鈴木七七とか佐藤四六四九とかこの名前の眷属が増えて欲しい。

お味はというと、よく見かける美味しい芳醇なお酒で個性が際立っているという印象ではないかも。いや、美味しいのだけれどもね。

 

5月は夏酒が出始める季節。夏酒はスッキリと飲めるので酒量が増えてしまう。

中野、高円寺、阿佐ヶ谷の酒屋

酒屋さんは国内に1400あるといわれる製造元のうちのどの酒蔵の商品を扱うかを選ぶことを通じて、どの酒蔵を支援しているかを選んでいることにもなる。生産が小規模で広く流通していない美味しいお酒を見つけ出して店頭に置いてくれることは素人が容易に入手できない地方の美酒を紹介してくれることでもあり、美酒を維持することに繋がる。そこに酒屋さんの付加価値と貢献があると思っている。

 

地方の美酒を取りそろえた酒屋には経営効率を超えた日本酒への愛や意思を感じる。そんな近所の酒屋の備忘録。

 

日常使いは高円寺「高原商店」、そこに置かれていない銘柄が飲みたくなった際には「味のマチダヤ」か阿佐ヶ谷の「柳瀬屋」、さらにそこに新宿伊勢丹の日本酒コーナーを加えれば飲みたい銘柄はかなりカバーされる。

さらに贅沢を言えば、「飛良泉」、「天領」、「杉勇」を取り扱っている店が近くにあれば最高。

 

高円寺「高原商店」 日曜定休 10:00~22:00 (コロナ期 ~20:00)

https://ameblo.jp/takaharashouten/ 仕入れ銘柄を逐次発信。要確認。

庭の鶯、南、七賢、赤武、作、鳳凰美田、上喜元、紀土、吾有事、黒龍、楯野川、天青、秋鹿、大信州、賀茂金秀、羽根屋、くどき上手、栄光富士、黒牛、山本、天明、秀鳳、澤屋まつもと、豊盃、墨廼江、ゆきの美人、神亀、日高見、奥播磨陸奥八仙、澤の花、山和、白露垂珠、天の戸、海運など。

取扱銘柄数は年間を通じてとても多い。一升瓶のラインアップが多く4合瓶は扱っていない銘柄も多い。同日に置かれているのは10銘柄ぐらいか。入れ替わりの回転が速いのでホームページの入荷情報を見て訪店する方が良い。

 

中野「味のマチダヤ」 火曜定休 10:00~18:30

http://ajinomachidaya.com/

田酒、新政、獺祭、醸し人九平次、残草蓬莱、上喜元、伯楽星、横山五十、磯自慢、〆張鶴、くどき上手、九頭龍、豊盃、仙禽、群馬泉、喜正、村祐、貴、るみ子の酒、鷹来屋、早瀬浦、五凛、

飛良泉の扱いを3年前から辞めてしまったらしい。なぜだ。

私の好きな蔵元「上喜元」のマチダヤ用にタンク一本仕込んでいるオリジナル酒「こぶし」超辛口特別純米などここでしか手に入らないお酒がある。

蒐集したくなるカップ酒の取り揃え多数。盤城壽、秋鹿、墨廼江、國権、志太泉、雑賀らへんのデザインは好み。

 

阿佐ヶ谷「柳瀬屋」 木曜定休 12:00~22:00 (コロナ期 ~19:00)

http://yanaseya.com/ 情報は少ない

雁木、獺祭、宗玄、青煌、渡船、阿部勘、屋守、日置桜、いづみ橋、鶴齢、鯉川、亀甲花菱、海運、出羽桜、七田、大那、巽、三十六人衆、

店主がとても気さくにお酒の説明をしてくださった。自信満々に「そういうタイプが好みなら〇〇で一番だと思うお酒はこれ」と推奨してくれる。

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巨大鸞鳳玉柱姿鉢の1ヶ月経過後

 hannarimango.hatenablog.com

 

4月初旬に植え込んだ巨大な鸞鳳玉柱を模した植木鉢のその後。

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天辺に植え込んだ「青の渚」はしっかりと根が張ったようだ。いつのまにかこんなにも毛むくじゃらな花穂を出していた。紅と黄の色彩の強い二色でなかなか個性的。

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花穂の茎も紅色というのは珍しくないだろうか。茎が紅くても葉はやはり緑色なのだな。この穂先だけでも見応えがある。そして蕨のようにくるりと巻き込まれた、続々と控えている新しい蕾たち。

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どうやらこの巨大な陶鉢の天辺を気に入ってくれた様子。青みがかかった毛むくじゃらの葉も調子がよさそうだ。

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 アエオニウム「レモネード」もなんとか折り合いをつけて活着してくれたらしい。葉が短くなり、色味も黄色が弱まり緑が濃くなっているのは日照不足だろうか。もう少し様子をみたい。

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クラッスラ「銀揃」は少し徒長気味だが状態は良さそうだ。その左下の「虹の玉」も新葉を出していることが確認できる。無事に根が張ってほしいばっかりに水をやりすぎたのかもしれない。

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良型に育てられると美しいエケベリア「フロスティ」は産毛が密な新葉がでてきているが、矮小化し形も歪になっている。根は張って枯れる心配はなさそうだが適応に苦労している様子。 

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 「美尼王妃晃」も葉の厚みを見る限り、しっかり根差したようだ。土容量が少ない陶器の枝先に植えてあるので心配していたが大丈夫そうだ。もしかしたら水捌けが悪いかもしれない。

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オーロラは少し弱々しい様子。ヒダの裏で陽が当たりにくいので徒長気味だ。

 

理想的には鉢が回転して各方向に植えられた多肉植物が均等に日照を得られれば良いのだろうけれども、いかんせん鉢が大きすぎるし日々、回転する手間はかけられない。日陰気味の場所には硬葉ハオルチアなど耐陰性の高い株を植えるべきだったようだ。

 

5月の緑道

5月の周辺の花壇警邏。この季節は犬の散歩も気持ちが良く距離が伸びる。


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ジャーマンアイリスハゴロモジャスミンが豪華絢爛に咲き誇る一画。これだけ咲き競うと辺り一面に芳香が満ちる。

ハゴロモジャスミンもお茶に使えるそうだが、中国で売られているジャスミンティーとはだいぶ姿が違う。中国で茶に使われる品種も庭に植えれば手軽にお茶に利用できるのか。

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案外、目を凝らすとあちらこちらに多肉植物は植わっているものだ。この黄色の絨毯は万年草によるもの。アロエも群生している。

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多肉植物の松葉菊も金属質な花弁を打ち上げ花火のように広げていた。数年前は白も橙色も植わっていたのに紫だけが咲いている。紫の方が白や橙色よりも遺伝的に優勢なのか強健なのか。

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バンクシアとは珍しい。露地植えされて長い様子。梅雨に長雨に打たれても大丈夫な植物だとは知らなかった。

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五月といえば菖蒲。

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いや、五月はむしろ薔薇か。

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薔薇というやつは放置しているだけでは毎年継続して綺麗に咲かせられない。みんな、愛情をこめて手入れされているのが伝わる。

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私には無理だと諦めて手を出さない分野。せいぜい「砂漠の薔薇」を育てるのが関の山。

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赤いなあ。今日一番の赤だ。

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カメラ表現力の良し悪しをあぶり出すという赤色。iPhoneでも健闘していると素人目には映る。

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蘭を咲かせる名人のお宅もある。

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初めて見た花。やたら細い葉を持つ五弁の青花。なんという名前だろう。気になる。植えたい。調べるとクロタネソウというらしい。

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緒環。私が庭に植えた株は咲き、季節を終えて枯れた後に溶けてなくなってしまった。

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何だろう。キバナコスモスかね。

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梅も育ってきている。まだ植えて4年の梅は根張りが弱いのか、結実しても成長を支えきれずに生理落下する実は多い。朗報は確実に年を重ねるにつれ落下する実の数は減っていること。バラ用だが、遅効性の肥料も今年から施すことにした。

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葡萄の葉も動き始めた。ルーマニアにはサラマーレという挽肉を葡萄の葉で巻いてロールキャベツのように調理した国民料理があるのだが、今年はそれに挑戦してみようか。


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これから6月に向けて紫陽花が充実していく季節かね。

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読書備忘録:blink 第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

The Power of Thinking Without Thinking 

原題の副題は「考えない思考力の威力」とでも訳すべきなのか。邦題の「「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」は商業的な惹句が過ぎると思うし本著の趣旨と異なる。最初の2秒のなんとなくの威力とそれを有意義に使えるようにするために必要なことが書かれており、それは無条件に正しいわけではない。実際には「最初の2秒」の不適切な「なんとなく」に従った悲劇や惨状が例示されている。例)米国でカーチェイスの後に頻発した警察官の黒人射殺事件。

 

「適応性無意識」無意識化で一気に結論に達する脳の働き。人が活きていくうえで必要な大量のデータを瞬時になんとかして処理しようとする能力。

 

1983年9月に美術商ジャンフランコ・ベッチーナからJ.P.ゲッティ美術館に持ち込まれた古代ギリシャ像の真贋。14か月かけて美術館が弁護士や専門家を総動員して判断した本物であるとの結果と古代ギリシャ彫刻に関する世界的な権威たちがわずか2秒で一目見て得た「直感的な反発」に基づく異なる結論。この本は先端技術を駆使した真贋判定にも勝る2秒の直感の力を主題にしている。

 

「とっさの判断と第一印象だけでも、人は状況を的確に理解できるのだ。瞬時に下した判断も、慎重に時間をかけて下した結論と比べて、けっして見劣りしない。この事実に目を向けてもらうことが、本書の第一の目的である。」

「第1感を信じていい場合と信じて歯いけない場合を区別することは可能なのか。この疑問に答えるのが、本書の第二の目的だ。」

  

例1 

ジョン・ゴットマンは彼の心理研究所で3000組以上の夫婦の会話1時間分を自ら考案した感情分類で解析しその夫婦の15年後を95%の確率で予測できることを示した。

結婚が専門のセラピストや研究者、宗教関係のカウンセラー、臨床心理学を学ぶ大学院生、離婚経験者など200人に同じテープを見て判断してもらった全体の正解率は53.8%だった。

ゴットマンは離婚する夫婦のサインに注目した。結婚生活にはその夫婦だけのサインがあることを発見した。防衛、はぐらかし、批判、軽蔑、中でも軽蔑の感情が最も重要だと彼は考える。二人の関係に関して夫婦に話をしてもらい、その会話中での軽蔑の感情の発露を調べることで話している内容に関係なくその後の夫婦関係を高精度で予測した。

混乱を招くような無関係の情報に邪魔されずもっとも重要な「サイン」「筆跡」に注目すると短時間で精度高くものごとは判断できる。

 

例2 

医療過誤保険を売っている保険会社による、どういう医者が訴えられる可能性が高いかを調べた調査。医者が受けた教育や実績、過去に犯したミスの記録の分析よりも医者と患者の短い会話の分析のほうが正しい評価を下せる。医者が医療事故で訴えられるかどうかはミスの回数とは関係なく、患者が医者から個人的にどんな扱いを受けたかのほうが重要とのこと。さらに突き詰めると威圧感のある声の外科医は訴えられやすく、患者を気遣うような感じの外科医は訴えられなかった。教育、技術、経験は関係なかった。

  

 

顔の認識。

一度会わせた人の顔が同一かどうかを顔写真を見比べて判断させると高確率で正しく判断できる。顔の特徴を言語化して説明させると、その後面通しをした際に正解率は落ちる。何もしなければ問題なかったはずの顔を見分けるという能力が、顔の特徴を説明すると弱まる。言語による書き換えにより視覚的記憶(右脳)が左脳に追いやられてしまう。右脳的認識が優れている対象において言語化すると情報は劣化する。

 

感覚転移

セブンアップの缶のパッケージの緑色に黄色の割合を15%足すと、飲んだ人はラムやレモンの風味をより強く感じる。

ラビオリの缶詰めに平凡な親しみの持てる顔写真があると味の評価がプラスに働く。漫画風のイラストにすると評価は有意に下がる。

デルモンテが桃を瓶に詰めたら缶入りよりもおいしいという評価が出た。

目や記憶や想像力から得た感覚にも反応し、味の感覚に転移させる。ブラインドユーザーテストの通りにはならない。

 

革新的製品は市場調査になじまない

なじみのないこれまでと違う製品は当初、低い評価をうけることがある。例ハーマンミラーアーロンチェア。市場調査ではよくない製品となじみがないだけの製品の違いをとらえられない場合が多い。

 

論理的思考力が洞察力を損なう

情報過多が判断の邪魔をする

感覚的な評価はそれを言語化する訓練を受けていないとその他の視覚的、知識的評価に引き摺られることが多い。 

心拍数が175を超えるような状況下での直感は過つことが多い。

 

 結局は、

1)結果に最も寄与する徴候・シグナルをどう見出すか、

2)それを直感的に把握認識できる能力を鍛えられるか (付随してバイアスがかかる状況をどう避けるか)

このどちらも伴うことが必須で、どちらもできるかどうかはその人のセンス次第と片付けられてしまう気もする。

 

COVID19下でこそ見応えのある映画数本

幸せの絶頂で悲劇の名作を観てもいまいち味わい尽くせないように、その時の世相や状況でより味わい深くなる映画があるのだな、と思った数作。

 

コンテイジョン Contagion ☆☆☆☆

COVID19後に作られたと思うような、8年前に既にCOVID19を予見していたかのようなパンデミック映画。再度脚光を浴びている話題作だというのも納得。

「実効再生産数」だとか「医療崩壊」だとか、コロナ禍で初めて聞いた馴染みの専門用語が頻出し、今現在、起きていることの復習と全体理解に最適。感染の経路調査により不倫がバレるだとか、モノを介した感染の現場描写だとか、やがて暴動や社会不安に繋がる様、都市封鎖、開発されたワクチンを誰から接種させるかなど私たちが経験したこと、これから経験していくであろうことが描かれていて驚嘆する。単に娯楽パニック映画としてもテンポよく楽しんで見られる。

アメリカでワクチン接種が始まることでこのハリウッド映画は幕を閉じる。世界的感染拡大後に大国同士が非難し合うなど現実世界の方がフィクション映画よりも醜いとも言える。アメリカで開発されたワクチンが自由主義陣営各国、同盟国、敵対国などにどのように提供されていくのか。はたまたそこに協調はなく敵対国も自らワクチン開発するしかないのか。ここらへんは全く映画では描かれない。

マット・デイモンケイト・ウィンスレットローレンス・フィッシュバーンマリオン・コティヤールグウィネス・パルトロージュード・ロウなど出演者がやたら豪華。主役を張れる役者は脇役でも個性が光る。

コンテイジョン (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

ディスタービア Disturbia ☆☆☆

自宅軟禁処分を課せられ、自宅から3か月間も外出できなくなった主人公が巻き込まれる隣人トラブル。これもCOVID19で不要不急の外出を禁じられた生活が長引くなかで、より一層の親近感をもって観られる映画。

多くは説明しないが2007年にアメリカで大ヒットしたおすすめ娯楽サスペンス。

ヒロインのサラ・ローマーはハリウッド版「呪怨 パンデミック」でデビューし、後に「HACHI 約束の犬」にも出演しているが何かそういうものに縁があるのだろうか。

ディスタービア (字幕版)

ディスタービア (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

コロニア ☆☆

フィクションのサスペンスかと思ったがまさか史実に基づいているとは。エマ・ワトソンが演じるからには単なる娯楽作ではなさそうだとは思ったけれども。

一度入所したら二度と出られないといわれたコロニーでの束縛、虐待、人権侵害がCOVID19下で共感しうる要素かもしれない。

迂闊なことを書けないが映画鑑賞後に調べれば調べるほど人類の救いの無さを感じる。 

  • チリにおける元ナチス党員でヒトラー崇拝者が建設したドイツ人コロニー。
  • ピノチェト政権と結託し拷問施設として政敵や秘密警察に捕まえられた人達を拷問していた。 
  • 長年、元ナチス党員の設立者の元で児童への性的虐待が行われていた。
  • チリ国内で発見された民間としては最大の兵器庫には戦車や火器、弾薬が大量に保管され、政治犯への人体実験も行われていた。
  • 現在もコロニーは継続されており、ドイツ料理を提供するレストランや宿泊施設が外部開放され観光施設として営業しているとのこと。これが一番驚いた。
  • 映画と関係ない余談だがイギリス元首相サッチャーピノチェトを盟友と位置づけ、ピノチェトが亡くなった際にもその死を惜しんだ声明を出している。ピノチェトはチリの長期的な貧窮と圧政の元凶であり大勢を粛清した独裁者だと理解している一方で、自由、人権、民主主義を掲げる英国の首相が盟友だの恩人だのと持ち上げている。フォークランド紛争で英国支持に回ったからだとしても、私には理解し難い。 

次々とコロニーの悪事が明るみに出たのが2006年前後のことらしく、そこまで大昔の話ではない。私は今日に至るまで知らず、随分と無知に生きてたのだな、と思った。 

コロニア(字幕版)

コロニア(字幕版)

  • 発売日: 2017/02/08
  • メディア: Prime Video
 

きっとうまくいく  3 Idiots ☆☆☆☆

2009年当時のインド映画歴代興行収入No1ヒット作。COVID19で環境が激変するなかで自分の仕事や人生の価値観を再考するのには良い映画かもしれない。

  • 男ならエンジニア、女なら医者
  • 経済的豊かさの為の良い職、良い職の為の良い学歴という強固な先入観
  • 貧困から脱出するために家族親族の期待を一身に背負う若者
  • 教育が原因の都市部若者の間で非常に高い自殺率
  • 社会にはびこる拝金主義

これらの状況を風刺し、学問は何のためか、創造とは何か、人生に大切なことは何かを問いかける、男の友情物語であり、恋愛物語であり、悲劇であり、喜劇であり、ミュージカルでコメディーなボリウッド映画。世界中で大ヒットしたのも納得のとてもよくできた映画で見て損はない。邦画でいえば「ALWAYS 三丁目の夕日」のような映画。

〇〇ドルもした靴だぞ、服だぞ、と成金に叫ばさせるくだりはみていて痛快。

この作品のテーマを浮き彫りにする象徴的な人物としてチャトゥルという男が登場する。米系大企業のヴァイスプレジデントとして出世しランボルギーニを乗り回し、自分のほうが主人公の人生よりも成功していると証明しようと躍起になるチャトゥル。工科大学時代は学問の目的に無頓着に良い成績の為に丸暗記をし、他を蹴落とし、教授のご機嫌を取り、主席は逃すものの2位の成績で卒業する憎まれ役だ。学歴を極められなかった人達、高給な大企業の職に就けなかった人達、経済的に恵まれない人達、現在のインドの大多数の人たち、そしてこの映画に夢中になった大勢の観客はそんなチャトゥルを嗤い、溜飲を下すのかもしれない。そして翌日、チャトゥルのような経済成功者が暴力的に力をもった日常世界に帰っていくのだろう。

 

人生を生きたいように生きていける強さをもった人は少ない。理想論は映画の通りだけれども現実はそんな簡単にはいかないんだ、せめて映画の中で夢をみさせてよ、と現実逃避の娯楽作として消費して終わってしまうのが大半なのだろうな。好きなように生きていけるようになるためには自他を比較しない芯を持ち、それで食べていけるようになるまでの抜きんでた能力、そしてそこに至るまでの忍耐や犠牲など様々なものを伴う。家族を持つならば伴侶を惹きつける魅力、日常の不自由と折り合う調整力なども求められる。思う通りにいかなかったとしても周囲のせいにしたり恨んだりしてもいけない。評価指標の明確な世界で努力を積み重ねるよりも大変かもしれない。

そういえば私の知っている優秀なインド人は工科大学を出て就職した後もMBAを取ったり、その後マーケティング職やらにキャリアシフトして上昇し続ける人が確かに多い印象。貪欲で野心的で挑戦をおそれず、その裏ではまわりが怠惰や娯楽に耽る間に努力を続けてきた人達なのも事実。

 

主人公のように強烈な才能とバランス感覚と確固たる価値観に恵まれた人間はチャトゥルのような超競争社会の勝組である経済エリートすら持ち合わせていないものを勝ち取った「さらに上位の勝ち組」というだけだったりしないだろうか。私たち凡人には勝ち組エリートよりもさらに遠い存在が、あたかも私たちにも手が届く存在のように描かれているのは罪深い。主人公のような人生の成功を目指すのはさらに狭き門かもしれないが、そこを目指す覚悟を決められるか。

アールイスウェル 

きっと、うまくいく(字幕版)

きっと、うまくいく(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

以下はCOVID19と関係ない単なる備忘録。

 

アンストッパブル Unstoppable ☆☆☆

実話に基づいた劇薬を積んだ暴走貨物列車 から市街地を救うヒーロー映画。

採った作戦が悉く失敗したガルビンはクビ。連携しながら陣頭指揮をとったコニーはVPに出世。窮地を現場で救った フランクは解雇が撤回され昇進、その後円満退職。作業手順の過失から問題を起こしたデューイは自主退社後、ファーストフード業界に転職。

なんだかわかりやすすぎる処分と昇進の明暗。実名でさらされ、大勢に記憶され続けるのはしんどすぎないか。

操車場長のコニーは早々に状況を諦めて人口密度の少ない農地区画で列車を脱線させることを会社に進言していた。実際そうなったならば農地は劇薬で汚染されただろうし、被害者も少ないとはいえ出ただろうし、会社の経済的損失は莫大になったと思う。問題解決策を立案し実行したのはフランクとウィルソンであってコニーは他の策が尽きた状況下でバックアップにまわっていたに過ぎないのに、事件解決後に最も報われているのはコニーのように思える。なんとなく美談でまとめられているが、おかしくないか。 

アンストッパブル (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

マップ・トゥ・ザ・スターズ Maps to the Stars ★

「クラッシュ」でトラウマ的記憶を植え付けられたデビッド・クローネンバーグの作品。

私が想像する以上にハリウッド映画やスターはアメリカ人にとって身近で興味対象なセレブリティなのだろうな。

火傷を負った女性にどこか見覚えがあると感じたが、なんと韓国の名作「オールドボーイ」のパクチャヌク監督によるハリウッドデビュー作「イノセントガーデン」でサイコパスな美少女を演じたミア・ワシコウスキ。2年であの浮世離れした少女のオーラは無くなってしまったようにも思うが、そう感じさせる平凡で幸薄い娘を見事な演技力で演じているというべきなのか。

虚栄と虚構を風刺的に描いているのだろうけれども、件の少女や母親は薬物による錯覚なのか説明もない。見終わったあとの納得感は乏しい。

 

「私は誰と知り合いよ」マウンティング競争。

金を持ってから、何をするか、何に使うか。

クローネンバーグば観賞後に胃もたれさせる天才。

『マップ・トゥ・ザ・スターズ』 [DVD]

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  • 発売日: 2015/05/08
  • メディア: DVD
 

 

理由 ★

「砂の塔」のようなタワーマンションに集まる虚栄心を描いた宮部みゆき著の直木賞受賞作小説の映画化という触れ込みで興味を持って観てみた。

 

どちらかというと殺人事件が結びつける人々の縁が主題でタワーマンションという新しい居住形態やステータスが引き起こす虚栄心、コンプレックス、優越感のようなものは深掘りされていなかった。今やタワマンと聞けば定番となりつつある低層階と高層階の確執も描かれてはいない。

登場人物の語り口調に違和感を感じる。ベストセラー小説を忠実に実写化するがあまりにテンポも悪く冗長な映画になってしまった印象。小説と映画では観客が費やせる時間と求められるテンポが異なり、そのまま映像化すればよいのではないことがよくわかる。

 

玩具屋の老いた主人役の麿赤兒が登場シーンは少ないものの、かなりの存在感だった。この人、高円寺大道芸祭で私が好きな演目、ゴールデンゴールズの母体、前衛舞踏の大駱駝艦を立ち上げた舞踏家でもあり密かにファンである。

伊藤歩さん、目が綺麗だな。 

多部未華子さんの初出演作品だそうだ。まさか、いやこの個性的な風貌はと思ったらやはりそうだった。宮崎あおいさんといい、その後活躍する子役は既に目立つのだね。

 

DIY 本棚のアンティーク風ラベル金具付け

本棚につけるラベルをつけるための金具を発注していた。50個入りで1000円もしない安さだったが、中国生産で届くまで1ヶ月かかり、届くまですっかり忘れていた。アンティーク加工され、経年劣化して変色したかのような風合いが素晴らしい。小さな螺子も100個ほど付属している。

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オーストリアのウィーン自然史博物館などの雰囲気がとても好きで、18世紀の当時、新世界を開拓しながら蒐集した標本の展示の仕方には未知への好奇心と希望を感じとれる気がする。あの雰囲気を少しばかり真似てみた。

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ラベルはPCのWORDからプリンターで印刷したのだが、紙が白すぎると感じたので珈琲に浸してみた。しかしそれでもまだかなり白く眩しい。2年もすれば沈着してくれるか。

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仕事関連の区画と趣味の区画が本棚を舞台に陣取り合戦のようにせめぎ合っている。かなり趣味が優勢だが。


もしかしたら何年かして子供たちが受験生になったらこれらのラベルは全て「参考者」「教科書」などに置き換えられていくのかもしれない。

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KLMのビジネスクラスに乗るともらえる陶器の家。ある時期、頻繁にKLM路線に乗っていたので8個ほど揃った。並べると小さなオランダの街ができるという趣向。もらいものの陶器を並べるとは不甲斐ない。


陶蟲夏草シリーズの区画、酒器の区画、山羊鉢の区画など、自作の陶芸作品シリーズごとの区画も作っていきたい。

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「アジアの陶器」「アフリカの陶器」など地域ごとの区画を作れたらいいのだが、それを満たすほどの蒐集物はない。


暇だといろいろなことをする時間がとれる。