前回、白馬に来た際に食事をした白馬の山菜のチーズフォンデュや肉料理が絶品だったウアレのオーナー店長さんが昨年からライフワークとして仲間たちと始動させた羊牧場に案内していただいた。
長靴に履き替え、苦土石灰をまぶして消毒する。雑菌を外から持ち込まないように注意を払う。
元々は牛牧場だったが5年ほど前に閉鎖されてしまっていたところを羊牧場として再生したのだという。
ここで飼育しているのは羊肉、羊乳、羊毛にバランス良く長けたポール・バセットという品種の羊で改良して角がなくなっているのだという。元々はイギリスのツノ有りの羊でオーストラリアでツノ無しに品種改良されたのだそうだ。羊は頭突きしてくるのでツノは無い方が安全ではある。肉乳毛のバランスがあり日本でも生産頭数が比較的多いことから選ばれたそうだ。
4年もすれば灌木が生い茂るのをまた地道に開墾したのだという。一度、ここまで低木を除くと羊が新たに生えてくる新芽を食べてくれて管理がしやすくなるそうだ。
とはいえ、全域が草原ではなく低木の藪もあり日中の日差しが強い時間帯は羊は木陰に入る。山上だと白馬平野部より涼しいとはいえそれでも夏の直射日光は暑い。これ以上温暖化すると白馬近辺でも放牧は厳しくなってくるかもしれないとのこと。
多様な草を食べると羊乳の味にも深みが出るのだという。主食は草でおやつのように玉蜀黍などの穀物も食べさせているとのこと。
メー メー と思ったよりも多弁。人慣れしていて逃げないしむしろ興味津々に匂いを嗅ぎに来てくれる。今年生まれた羊だというがもう大きい。
いやはや、可愛い。前脚や後脚の関節の造形、蹄の造形が素晴らしい。
電気柵で区画が囲われており、オス、メス、子羊と別れて暮らしている。電気は太陽光発電だそうだ。
あの素晴らしい味覚を持ったシェフが自分の理想とする羊肉だけでなく羊乳のチーズを世に送り出してくれる日を心待ちにしている。
ちなみに羊乳は牧草や穀物など餌の品質も重要だが加工の技術も大きく左右するらしい。
巨大な虻が絶えずまとわりついていておっかないのだが長い毛に阻まれて刺せない。
山腹、山頂に牧草地がいくつもあるのだが、最も標高の高いこの日は羊を放牧していない区画にも案内していただいた。
スキー場をリフトで上がったり登山道を登って見る景色とは全く異なる。雲上、山上の天国のような光景が広がっていた。
山頂から見渡すと人工建築物が一切見当たらない山の稜線が幾重にもグラデーションでつらなる絶景。
こんな景色を見ながら作陶できる工房があったら夢のようだな、などと夢想してみる。
こんなところでピクニックも良い。野点も良い。
案内していただいたお礼に羊の一輪挿しを贈った。思った以上に喜んでくださってこちらとしても嬉しくなる。自分でモノづくりをしていて良かったと思える瞬間だ。
途中、WING21という白馬村の立派なコンサートホールに立ち寄る。500人収納の音響環境も優れた施設なのだそうだ。
夜は幸運にも木崎湖の花火大会を見ることができた。首が痛くなるほどに真上を見上げ至近距離で楽しむ。花火の灰が時折降ってくるほどの近さだ。尺玉が破裂するたびにTシャツが震えるかのような音の衝撃波を感じる。
ナイアガラ花火も見られた。
今日も盛りだくさんの1日だった。