海猫とブランコとエクシブ初島と

昨年ぐらいから東京近辺の離島に行きたいと思っていた。式根島神津島小笠原諸島などに惹かれている。コロナで最良のタイミングではないのだろうがこの夏にまずはより本島に近い初島に行ってみることにした。

 

  • 熱海からフェリーで25分の離島。
  • しきたりで生活を守るために江戸時代から41戸しか住めない。
  • 戸数を増やせないので原則長男長女以外の継がない子供は島を出る決め事。
  • 残りたければ他の長男長女と結婚するしかない。
  • 現在はわからないが小中学校合わせて生徒は5人。
  • 海底ケーブルで本島から電気、水道水、温泉を引いている。
  • そんな少し変わった首都圏から最も近い離島。

 

  • エクシブ初島の屋上露天風呂は良い眺め。
  • 食堂街には夜営業の店がほとんどないのでホテル内でレストラン予約したほうが良い。満席だと夕食難民になる。(売店カップラーメンを販売してますと案内された)
  • ただしラストオーダーが15時のPICAアジアンリゾート内カフェのガパオライスやロコモコ丼も量が多く味付けも予想以上に本格的で美味だった。ホテル内の1/4の値段で気軽な部屋食ができる。
  • アジアンリゾート内のブランコは写真を撮りたくなる。
  • かっぱえびせんはフェリー上で海猫と戯れるのに必携。

 

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台風が過ぎた翌日とあって波は高く船は多いに揺れた。青ざめた顔の人も多かった。船内を黒いビニール袋を持った船員さんが巡回していた。乗船時間があと20分も長ければ多くの人が吐き始めていたかもしれない。

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風が強くて海猫も船を追うのに難儀していた。かっぱえびせんを天高く掲げると海猫がクチバシで掻っ攫っていくのだが、船と並走して飛ぶので時間が止まったかのように滞空する。こんなに飛んでいる姿の海猫を至近距離でじっくり見られることはなくて楽しい。

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実は動物好きには1番のエンターテインメントかもしれない。遠目には白く爽やかな見た目の海猫だが近くで見るとなかなか目つきが悪いのも愛着が湧いてくる。

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富士急行が経営するPICA初島もあり、アジアンガーデンという区画には海に向かって漕げる素敵なブランコがある。空の青へ海の青へ漕ぎ出せる素敵なブランコ。

 写真館で家族写真を撮るのもいいけれども、こういう景色での子供の記録写真を撮れるのは嬉しい。

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これが大人がやってもなかなか気持ちが良い。見事な写真映え。

 

初島はカフェも飲食店も基本的には昼間の営業だけで島唯一のスーパーマーケットの物価も驚くほど高い。綾鷹2Lペットボトルが350円。エクシブ内の売店で買うと440円近くする。コンビニもない。営業時間も短い。江ノ島のような苛烈な営業競争を全く感じられず、えらく長閑な島だ。

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泊まったのはグラン・エクシブ初島。経営するリゾートトラストの有価証券報告書を読むと地権者44名と20年自動更新の賃借契約を交わしており年間賃料は3億2500万円。初島の戸数は41戸に制限されているが地権者44名とのずれは誰なのだろう。いずれにしろ毎年山分けされる3億2500万円は大きい。1戸あたり700万円以上の不労所得があるとしたら、身を粉にして夜営業をしたりする必要もないのだろうな。利権を限られた人達で強固に守り、抜け駆けを許さず、みんなでのんびりやっていく。楽園的長閑さも強固に守られた経済基盤があるからこそという話か。

 

本島で生活するよりも初島で暮らすほうが守られた強固な利権で経済的に困ることはないのかもしれない。漁業、民宿や食堂経営で日々を送ることを受け入れられるなら。島民が消防団やお寺の維持や清掃活動やらあらゆる島の維持仕事を負担する共同体の濃密な近所付き合いを受け入れられるなら。嫁取り、婿取り、子作りのプレッシャーも乗り越えられるなら。

 

エクシブ初島の2018年度の稼働室数は200室で稼働率は38%。エクシブ箱根離宮の187室で稼働率84%、エクシブ京都八瀬離宮の210室で稼働率83%と比べると大きく見劣りがする。同様に電車の走っていない淡路島にあるエクシブ淡路島も稼働率38%なので島にあるエクシブはアクセスの悪さが大きな足枷になっているのかもしれない。ファミリー向けの間取りが中心で平日や老夫婦を取り込めないと平日の稼働率は上がらないのかもしれない。赤字の可能性は高い。リピート率が低いのではないか。エクシブ初島の経営撤退が初島住民にとっての1番の経済リスクかもしれない。

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のんびりとした島に来て世知辛い視点で考えてしまった。思索に耽りやすい眺めのせい。

 

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部屋からの眺望は素晴らしいの一言。バルコニーから見下ろすと岩場に砕ける白波が見え、ただ海だけの眺めよりも飽きない。白波の形や模様を眺めているだけですぐ10分、15分と時が過ぎる。

 

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グランエクシブ初島は古いがバブルの頃の贅沢な作りでオーシャンビューの部屋が殆ど。泊まった部屋は100㎡近くもあり、10畳間の洋室2つに20畳のリビングダイニングといった構成。東京の平均的なマンションよりも広い。子供達と部屋を完全に分けられるし思い思いのペースで快適に過ごせるので至極快適。これで素泊まり1室2万円、4名泊で1名5000円は高コスパと言える。

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しっかりとしたダイニングテーブルとミニバーカウンターと呼ばれる簡易キッチンもあり、食事スペースをきっちり分けることでリビングソファーエリアを散らかさないで寛げるのも良い。

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主寝室はリビングと開き戸を開放して繋げることができ、ベッドに横たわりながら外も見られる良設計。

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そして屋上の展望温泉露天風呂が気持ちが良かった。ナトリウム塩化物強塩冷泉を加温しているそうだ。しかも初島で湧いているわけではなく海中ケーブルで下田から送っているそうな。海風にあたりながら真夏でもちょうど良い熱さの濁り湯。本島からの海の展望露天風呂だと海しか見えないが、初島からだと海を挟んで伊東や大室山などが見える。

 

高波で14時40分以降のフェリー便が3便全て欠航してしまった。欠航した便で来る予定だった客は島に渡れなくなった。欠航した便で帰る予定だった客は延泊を強制されることになった。私たちも完全に島に閉じ込められたことになる。翌日も朝の時点でフェリーの運行見通し立たずとのこと。仕事を考えると離島は気軽に来られる場所ではないのかもしれない。

 

不便さや制約と利権に守られた島の長閑さ。美味しい鮮魚と海遊びと絶景展望温泉を目当てに都会から一度は覗きに行く価値のある初島