旅する陶蟲夏草鉢と題して街を歩く。
陶蟲夏草鉢をポケットに入れて、立ち止まって風景とともに撮る。一人旅で自分のペースで歩くとなるとこれがまた楽しい。
撮る意識で景色を眺めると遠景だけでなく近景もいろいろと発見がある。
人形を持ち歩いてさまざまな場所で撮影する趣味の人がいることを知っているが、なるほど。こういうことなのか。
細い頼りなげな鉄橋で深い渓谷が繋がれたクエンカ。冒険心を煽られる。
遥か見下ろす岸壁の上の家々。
そしてそれらを見上げる所々の小広場。
大広場とて巨大というほどではない。道端にテラス席が並べられクエンカ大聖堂と街並みを眺めながらとる昼食は「ああ、週末とはこうありたいものだ」と教えてくれる。
長い年月を経てまとう古色。使い続けるものだけで構成されている。
土からできた焼物は欧州の石造りの歴史都市に溶け込みやすい親和性を持っている気がする。
「魔法をかけられた街」なんて愛称のあるクエンカ。
急な坂道や階段も多く、少し登ったり降りたりするだけで見え方が多様に変わるのも楽しい。