醍醐寺-秋


秀吉の「醍醐の花見」で知られるように桜の名所なのだが、実に紅葉の名所でもある。6つもの国宝建築群、数多の文化財を有する霊宝館、池に架かる美しい朱塗りの橋、紅葉の石庭と見所は多い。京都の中心地から程よく離れていることから観光客も混みすぎず、落ち着いた雰囲気の中で古刹の秋を満喫できる。観修寺、随心院と一日かけてゆるりと廻って丁度良いコースとなる。





醍醐寺は山頂に修験者の霊場としてまず上醍醐が発展し、後に醍醐天皇の庇護の下に下醍醐が発展した。しかし応仁の乱後は951年に建立された国宝である五重塔しか残らぬところまで荒廃し、秀吉の醍醐の花見を機に三宝院など現在の陣容が再び揃った。そういう意味でも、やはり秀吉あっての花見の醍醐寺上醍醐下醍醐は徒歩で1時間ほどの山道だという。この構造も面白い。次回は是非桜の季節に登ってみても良いかも知れぬ。




毎年こんなに素晴らしい紅葉が見られるのだろうか。一本の楓からも枝によって緑、黄、紅が錦のように入り混じり豪華絢爛。桜のように樹木全体が同一色に染まるのも悪くは無いが、楓のように大規模に多彩なグラデーションを見せる楓には力強い美しさを感じる。京都の紅葉はこんなにも見事だったかと感動を一新される見事なものだった。残念ながら、最も目を奪われた楓は撮影禁止の三宝院の中。かくして好みの紅葉の寺として醍醐寺は心の中に納まった。



そして良さを再発見したのが桜の紅葉である。虫に喰われ、染みの入った橙色の葉がいつ落ちるかわからない頼りなさで秋の明るい陽射しを受けて無数に揺れる様には、華やかな楓にはない風情がある。