中国禅宗五山霊隠寺と空海あるいは弘法大師

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日本の巨大伽藍のような規模感の堂が3つも4つも連なっている。そんな壮大な霊隠寺は中国禅宗五山の一山で年間300万人も参拝者が訪れる名刹だそうだ。

 

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西暦326年、あるいは328年に天竺僧によって開山された霊隠寺は804年から806年に遣唐使の一員として中国に渡った空海が帰国前に立ち寄ったことでも知られる。そんなわけで日中友好30周年の記念に空海銅像が霊隠寺に建てられている。

 

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中国人は誰も気に留めず通り過ぎていた。碑文が日本語なのでこれが誰の像か、どんな由来があるのか、誰もわからないのだ。私が目の前にしばらく立っていると、ぼつぼつと人がやってきて、日中友好三十周年の文字を認めてあれやこれや雑談し始めていたが何を話していたのかはわからない。

 

折角ならば、空海が中国に学び密教を日本に伝えたその歴史の接点上にあったことを中国語で説明して欲しい。

 

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最澄と異なり、空海は僧侶としてはほぼ無名だったが医薬の知識に秀で推薦され遣唐使の一員として認められたのだそうだ。20年の留学予定で申請していたが滞在費が尽き実際は2年の滞在で帰国している。

 

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鐘楼門の屋根の下にさらにお堂があり、弥勒菩薩と韋駄天が祀られている。

 

空海の滞在は名ばかり留学だったのかとも思ったが遣唐使の選考時に中国語能力の高さが有利に働いたとも言われているし、「5月になると空海は、密教の第七祖である唐長安青龍寺恵果和尚を訪ね、以降約半年にわたって師事することになる。恵果は空海が過酷な修行をすでに十分積んでいたことを初対面の際見抜いて、即座に密教の奥義伝授を開始し[10]空海6月13日に大悲胎蔵の学法灌頂、7月に金剛界の灌頂を受ける。

8月10日には伝法阿闍梨位の灌頂を受け、「この世の一切を遍く照らす最上の者」を意味する遍照金剛(へんじょうこんごう)の灌頂名を与えられた。」

と伝えられていることからも中国語も堪能で仏法にも通じ、只者ではない風格をすでに纏っていたらしい。外国からの留学生にほいほいと阿闍梨位をあげるものではないだろうから。

 

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左右に並ぶ四天王像は高さ8mにもなるという。どれもこれもが巨大だ。しきりに祈る人達の列。

 

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中国に渡って即座に仏教談義をし奥義伝授に挑むほどの中国語力をどうやって空海は日本で身につけたのだろうか。日本でも読み書きのできる僧はそれなりにいただろうが、何せ中国語は発音が難しく、言葉を知って発話しても発音が悪くて伝わらない事態になりがちだ。一人や二人、日本で周囲に中国人の僧がいて師事できたとしても、中国語で話せる人に囲まれていたわけではないだろうから依然中国語の習得は難しかったはずだ。現代のように辞書が充実していたわけでも廉価な語学教室や動画もなかろうし。

 

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高さ24.8mで中国で二番目に大きい木造仏。1953年に再建された当時のものだが、周恩来が許可して政府から二度にわたり現金と金塊を支給して造られたという話。共産党は仏教にそれなりに寛容を見せ支援していたのか。

 

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写真で見ると臨場感に乏しくて残念だが、5m近い像がかなり前傾して並んでいる。これが衆生に手を差し伸べ傾聴しようとしているかのような視覚効果を生んでいて新鮮だった。仏像はえてして棒立ちなのだが霊隠寺の仏像は動きがある。

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無論、20世紀に入ってからの像だということもあるがこの写実的な造形でこの巨大さの仏像が並ぶのは新鮮だ。

 

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仏像というよりも巨大な仏教フィギュアに思えてくる。

 

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高さ20m一面を覆い尽くす。見たことのない迫力。

 

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2年の留学で多くのことを学び、帰国後は最澄と双肩を為した空海は真に天才だったのだろう。だから中国語も容易く学び使いこなしたし本場で密教の深みへとたどり着いたんけだ。

 

これだけ技術も環境も劇的に8〜9世紀と比べて進歩した現代において未だに中国語をろくに話せない私はなんとも愚鈍。技術が進歩して環境に恵まれても意志薄弱の人間には意味を成さず。もう少し頑張らないといけないような気がしてきた。

 

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