フランスの会社では社員は年間40日の有給取得の権利があり、会社としては有給休暇を取得させる義務がある。何が起きるかというと上半期に有給を全く取得していない社員がいると、下半期の年度末にまとめて有休消化させないといけなくなるので繁忙期に戦力にならなくなる。よって一定以上の有給を上半期中に消化しておくように部下に発破をかけるのも管理職の仕事になる。「別に行きたいところもないのに有給とらされちゃってさ)」などとうそぶくやつもいる。
さらにフランスでは6年働くごとにサバティカルを申請できるらしい。休職制度だ。
一緒に仕事をしていたフランス人の一人の子が、秋から1年間サバティカルを取得して世界一周旅行に出るのだという。
仕組みとしては会社側としては1回は断ることができるが2回目は申請を受理しないといけないのだという。似たような職種に復帰できることが約束されているそうな。
子供ができると気軽に世界一周というわけにもいかない。1年ともなると賃貸物件も引き払うなど身軽さが問われる。
昔は1年間のサバティカルでMBAに行く人も多かったようだ。しかし最近の若い子は旅行や趣味の為に取るようだ。
1年後にはポジションをまた用意しないといけないし、結婚したら育休産休が断続的に入るようになる。部署の中間管理職は「そういうもんだから、仕方ないよね」との達観。当たり前と受け止める環境があってこそ、女性もキャリアと子育てを両立できるようだ。
こんな環境でも回るような生産性を獲得すべきなのだろうな。彼らと仕事をするとあれだけ議論好きで生産性のない会議も多いのに有給や育休、サバティカルの仕組みとともにフランスの会社は回っていく不思議。そうか、多くのフランスの大企業は海外子会社に稼いでもらっているからか。資本主義経済下でも帝国主義を遺憾なく発揮して使役する仕組みを作っているのか、流石フランス!などと捻くれたことを考えていた。
労働組合が強固で不満があればすぐにストライキ。そうやって築き上げてきた数々の手厚い制度。しかし幹部や経営陣が嘆いていたが、自分等にもしっかりご褒美のような制度を作っていることを知ってしまった。
その会社では勤続年数が一定年数を超えると、早期定年退職が可能になる。定年は62歳ということだが勤続30年に達すると9か月間早く退職でき、しかもその間は有給扱いになる。つまり出社しなくとも給与が支払われ、勤続年数にカウントされる期間が9ヶ月もらえるようになる。さらに有給休暇の完全消化などを加えると、実質61歳で定年退職するが、年金や制度上は62歳まで働いた扱いになる。最も高く積み上がった報酬を働かずに丸々1年間もらえるご褒美のようなしくみだ。
来日観光客一人当たりの消費額をどうやって増やしていくかというニュース記事を読んだが、インバウンドでターゲットにすべきはシニアのフランス人だ。
はあ、ため息が出る。片や、給料を半分に下げて再雇用することを社員のためだとする日本、片や給料一年分プレゼントして早期退職のフランス。人生を楽しむための執念のようなものを日本もフランスや欧州の制度に学ぶべきではないのかね。
注:上記制度は会社によって異なる
注:快適に作った諸制度の内側にアフリカ移民を入れたがらない排他問題が生じる