Instagramを始めて良かったこと。それは作品を購入したいという引き合いが6件ほど来たこと。私は自分が欲しいものが売っていないから作っており、小遣い稼ぎで販売目的に作っているわけではない。なのでお伝えしている「譲っても良いですよ」価格は安くはない。それぐらい払っても欲しいぐらい私の鉢を気に入ってくれる人には譲ります価格だ。
だから「趣味の素人作家がえらく強気な値段だな」「そんな値段なら買わないよ」と少し気分を害している人もいるのだと思う。申し訳ない。既に所有している私物を手放す際にはそのモノへの評価が高くなる心理バイアスが人間にはあるのだ。自分が欲しくて時間をかけて作っているならばなおさら。
強気に思われる値段を伝えても、それでも欲しいと言ってくださる人が何人かいる。そのうちの1人にこの蝉幼虫陶蟲夏草鉢をお譲りすることにした。「一点一点造形しているからけして高いとは思わない。むしろかなり安いのでは」と言ってくれている。多肉植物は抜いてからの状態で鉢だけ送って欲しいとのこと。
相手がプラスチックの造形鉢を製造販売しているお店の方だったので主力としているディッキアを植えて私の伝えていた金額と同等ぐらいの商品と物々交換したいと伝えた。繰り返すが自分の作品を積極的に現金化したいわけではないので、現金が届くよりモノづくりしているもの同士、相手の制作物をもらえる方が嬉しい。
そして届いたのがこちら。初めてのディッキアというパイナップル科の植物。サボテンや多肉植物ではないが乾燥にえらく強いので一緒に育てやすい。なんだか巨大なハオルチアやアロエのようなものか。
Dyckia Delicata Pink&Gold(ディッキアデリカータピンク&ゴールド)という園芸品種だそうだ。
私の好みを察して最も百足のような蟲っぽい株を選んでくださったとのこと。確かに中心から八方に飛び出す百足蟲のようだ。
鉢も素晴らしい。最近は3Dプリントのプラスチック鉢が増えていて人気だ。しかし私はあの積層痕が好きになれない。形は個性的なれど工業製品と化してしまっているように思う。
こちらのプラ鉢は塊から造形するらしくて無論積層痕はない。しかも釉垂れした様を見事に表現していて、かつ素地と釉垂れの表面の質感が異なっている。作陶する者としてはなんとも嬉しいプラスチック鉢だ。ちなみにサボテンを育てるならば温まりやすく排水性に優れたプラスチック鉢が最適だ。施釉した陶器鉢よりも。
ディッキア、そして一体成形プラスチック鉢の魅力的な世界へと案内してくれたD.I.P.fukuokaさんには感謝感激。それぞれ得意分野が異なりつつも植物を愛する共通点で作品交換をするのはなんとも楽しい。等価交換という原則上、自分の作品の他者評価が上がればより良いモノと交換できるというのも励みになる。
私の趣味を理解しない妻は、「せっかく陶器鉢を減らしても代わりにプラスチック鉢をもらうとか意味がわかりません。次回からは現金とか美味しいお菓子と交換して下さい」とのこと。わかってない。