バイエルン宮殿レジデンツのあまり人が観に行かない銅像展示エリアにそれはあった。
私がこれまでの人生で見てきた中で最も素晴らしいメデューサ像。
その美貌からポセイドンの愛人にされ、アテナの怒りを買って髪が蛇の化物にされたメデューサ。ペルセウスの祖父がペルセウスを排除するために殺されることを期待して命じたメデューサ討伐。ひたすら被害者でしかないメデューサの事情が開いた眼と虚な表情に表されているように思う。
ペルセウスの喜びの全くない表情も、言い掛かりで討伐を命じられた虚しさと祖父から死ぬことを望まれているやるせなさを感じさせる。
この首断面の生々しさ。銅像でこんなにも動的な瞬間を形にしたものは少ないのではないか。
頭を失った体も化物としてではなく若い娘として表現されており、作者の明確な意図を感じる。
このテーマでこの像を造らせ、宮殿や邸宅に置くという感性もなかなか凄いとも思う。
空間、照明、展示の全てが素晴らしいと思った。欧州の美術館では展示全体に感嘆することが多い。