2022年に観た映画備忘録と百選

2022年は殆ど映画を見ていないかもしれない。死ぬまでに繰り返し観たい映画として選出できたのはトップガン・マーヴェリックとエールだけだった。寂しい。

 

トップガン・マーヴェリック ☆☆☆☆ 百選

多くは語らない。トム・クルーズによるトム・クルーズの為の映画だけれども胸熱にさせてくれる要素がちりばめられている。

 

エール ☆☆☆☆ 百選

父、母、弟ともに聾唖な家族を持つ主人公の女性が夢を叶える青春ハートフルコメディラブドラマ。生活は楽ではないけれどもポジティブで誇りを持ち性に旺盛な両親がフランス映画らしい。父親の飾らない粗野で慈愛に満ち、ポジティブな人間像が素晴らしい。魅力的な脚本や展開、素晴らしい歌声。2022年に観た映画でダントツ1位。後から知ったが2022年の米国アカデミー作品賞を受賞した「CODA あいのうた」はこの「エール」のリメイクなのだそうだ。

 

リチャード・ジュエル ☆☆☆

過度なプロファイリング依存を進めていたFBIが功を焦り犯人のプロファイルに合致する警備員を早々にアトランタ爆破事件の容疑者に仕立て上げメディアも動員して世論操作して追い詰めた冤罪事件。

どんな組織も動かしているのは未熟で様々な欲やプレッシャーに晒された個人。プロファイリングとは先入観であり、類型化、レッテル貼りとも言える側面があるのではないか。

リチャード・ジュエル(字幕版)

リチャード・ジュエル(字幕版)

  • ポール・ウォルター・ハウザー
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由宇子の天秤 ☆☆☆

目立たない良作。関西で発生したいじめ事件とその加害者と同姓同名の赤の他人へのネットリンチ。マスコミは食いつきやすさを盛り、世間はこいつは叩いて良いのか悪いのか雑な判断を下す。リチャードジュエルに通じる点も多い。

 

すずめの戸締り ☆☆☆

「天気の子」よりも好き。音楽も良い。神様であり要石だった猫が要石の役割を他人に移して自由になりたいというのは理解できる心情。草太も神を宿して要石になっていくと草太の祖父が語っていたので猫もかつては人間だったということか。知らない誰かがその他大勢の為に犠牲になってくれれば良いという結末は寂しい。それは福島原発における震災地と東京都民の関係にも通じるかのよう。

 

スイングステート ☆☆

騙される選挙参謀が痛快。

 

ドライビングマイカー ☆☆

アカデミー国際長編映画賞受賞ということで観てみた。異なる母国語の演者がそれぞれの言語で台詞を話し、字幕が舞台背後に投影される斬新な舞台。夫婦関係であったり不幸な出自であったり村上春樹らしい自己陶酔的な創作設定が私には馴染まなかった。現実感のない抒情的物語を傍観する意味では一度観ても悪くない。

 

アウトポスト ☆

アフガニスタンにおける米軍「カムデシュの戦い」の映画化。アフガニスタン戦争の背景やイデオロギーなどは一切描かれず、なぜこのような立地に設営したのか不明な不利な地理条件に作られたキーティング前哨基地でのタリバン兵による奇襲に必死に抗う米兵をひたすら細かく描く。圧倒的火力に無造作に駆逐されて死んでいくタリバン兵のエピソードも皆無。米兵一人の命はタリバン兵100人の命と釣りあうかのような描かれ方。